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目の前の巻きずしに愛を込める

今回の相談者の方は「思いもよらなかった今の自分の人生の居場所」についてお手紙を下さいました。今回の相談者さんの文才がすさまじく、ちょっと紹介が長くなってしまうのですが、もし良ければお読み下さい。

それで、この方は去年なんですかね、明確な日時はなかったのですが、一年間、人生のステージをワンランクアップするために就活を続けてきたそうなのです。そのための資格を得ることなどに10年費やしてきたそう。それで、採用をされたら日本全国、または海外も含めて「どこでも行く」という覚悟で求人先をしらみつぶしに応募したけど、不採用通知が無慈悲にも届き続けた。労力をかけて応募書類を整えても、「不採用通知」という紙切れ1枚が郵送されるたびに自分の中の何かが削られていく気持ちになったそうです。わかります。あれはめちゃくちゃつらいですよね。

結局20件以上書類で落とされてしまい、「自分のしていることはなにか違うんじゃない」と思いはじめたころ、近所のスーパーで早朝7時から9時のパート募集の広告が目に留まり、「やってみようかな」と軽い気持ちで記載された連絡先に電話をしたそうなのです。

そしたら、血眼になって就活しているときはまったくうまくいかないのに、こちらの方はとんとん拍子に話が進み、電話をしてから1週間も経たないうちになぜか調理場に立っていた。それで、お寿司部門に配属され、分厚い玉子焼きやら、海老カツ、ツナとカニカマのサラダ巻きなどを2時間ひたすら巻く仕事をやっていたと。

「しいたけ.さんの一皿のチャーハンに愛を込める話をいつも思い出し、はじめはなかなかうまくいかずに失敗続きだったけど、少し慣れてきて、店頭に並んだその後の食べている人の笑顔を想像しながら巻いています」。もうね、ここまでで涙が出そうです。

それで、仕事がやたら楽しくなり、毎日職場に行くのが楽しみになったのですが、ハタと不安になったそうです。相談者の方の言葉を借りると

「これは、これまで追ってきた夢が実現しないという現状から逃げている、つまり現実逃避なのではないか」

と。

「私はこのまま巻きずしを巻き続けて良いのか」というご相談でした。

あー、本当に素敵なお手紙で。僕のチャーハンの話もしてくれて本当にありがとうございます。あと、文章が物語調になっていて本当に上手い(笑)全部引用したくなりました。

知らない方もいらっしゃるでしょうから、僕のチャーハンの話を少しさせて下さい。僕が今の占いの仕事に就く前に、中華料理系のファミリーレストランの厨房でずっとチャーハン鍋を振っていたんです。その頃の僕のプライドはけっこうズタズタで、就職活動に全部落ちたり、色々なことがあって「チャーハン」しか居場所がなかったのです。通常、そういう状態の時にはふてくされたりするのも正しいんだろうけど、「自分の今の事情と、目の前のチャーハンにはなんの関係もない。だからせめて、チャーハンとかお店とか、お客さんには必要とされるようにしっかりやろう」と思い、チャーハンを振り続けたのです。「それが俺に残された最後の武士道だ」とか深夜のバイトの帰り道に言っていて、お巡りさんによく職務質問を受けていました。

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