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「あの人、悪気はないからさ」の背景に潜む、禁忌の森の存在について

今回のコラムで書きたいことは、お悩み相談のお手紙などでもけっこう多く寄せられたりする、「あの人、悪気はないのよ」についてなのです。

この「悪気がない」という状態について、これを読んでいる皆さんの中にも、「モヤッ」とした経験がある人はいませんか?

たとえば、誰かから明らかに「意地悪」とか「こちらを否定してくるような言葉」を使われたようなことがあったとします。

でも、その「意地悪」や「こちらを否定してくるような言葉」を使った本人の姿勢や表情に、「悪気がない」状態が付与していたら、やられたこちらとしても、「うーん、私の考え過ぎかなぁ」とか、「私が気にし過ぎているだけなのかも」と、モヤモヤを背負い込んで、そのやり取りから引き下がらないといけなくなったりする。

今からだいぶ昔にさかのぼった、僕自身の経験談なのですが、当時、友達同士で集まって、思った以上にその場が盛り上がったことがあったのです。興奮冷めやらぬ状態で、「ちょっとまたこのメンバーで集まろうよ!」という提案がされて、「じゃあ、どこにしようか」と、各々が携帯電話を使ってお店を調べ始めた時に、ある知人が僕に向かって「あなたは調べなくていいよ。そういう役割を期待していないから」と、さらっと言ったのです。

何かですね、経験的に、そういう人達の“口撃”って、速いんですよね。鋭い刃物で「サッ」と斬りつけるように、それをやられた人、そして、周囲にいる人に対しても、「攻撃の気配」を残さない。「えっ、今、何か斬られた?」とか「あれは何だったんだろう?」と考えている間に、次の場面や話題に移っていたりして、「ま、まぁ、いいか」みたいな感じで、流されていってしまう。

でも、その当時、「あなたにそういうことは期待していないから」と言われた僕は、確かに「うっ」となったのです。もちろん、僕自身に、その人をイラつかさせる何かがあったことは事実なのでしょう。

ただ、僕なりに一生懸命に調べようとしたし、とりあえず、お店の候補ぐらいは出させてほしいじゃないですか。

それで、後日、「あの時のことだけどさ」と、その場にいた人に相談したのですが、「え、そんな場面あったっけ?」と、言われてしまいました。やっぱり、素早い口撃だからこそ、気づかない人が多いわけだし、その口撃に気づいた人も、「あの人、悪気はないのよ」で済まされてしまったりもする。

上の例え話についてはもうこれぐらいにしておくのですが、そこから年齢を重ねていった時に、自分を納得させる言葉としても、「あの人、悪気はなさそうだしな」というものが出てきた時には、ちょっと注意をするようにしています。

というのは、「悪気はないしな」というのは、「そういう理由によって納得したことにして、それ以上、その問題に対して首を突っ込むことをやめようとする姿勢を持つ」ということになるわけです。

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