野生の勘を取り戻したい
今回の相談者の方は、同い年の旦那さんと4歳の息子さんがいらっしゃるそうです。
旦那さんは家事も育児も率先してくれて、息子さんも可愛く、ご家族の仲は良いそう。その上で、現在は第二子を妊娠中だそうです。それで、ここからがこのお手紙が個人的にすごく好きな部分で、相談者の方は「結婚して子どもを産んでから、自分の勘が鈍ったように感じる」そうです。すごくないですか?冒頭の流れから、一気に「何その相談?」みたいな角度で切り込んできましたよね。笑
もうちょっと話を聞いてみると、具体的に「勘が鈍った」というのは、自分の好きなことやしたいこと、そして、食べたいものや読みたい本、行きたいところがわからなくなっている感じがするそう。家族のことを優先しているからというのもあるけど、自分の感性の毛穴が詰まってしまって、情報が上手く取得できない感覚、とのこと。いやぁ、自分の感覚に対しての言語化もすごいですね。ビシビシ伝わってきます。もうちょっと続けさせて下さい。
「結婚出産をしてからできなくなったことのひとつに、夜中に徘徊すること」があるそうです。以前は一人旅などもよく行っていて、国内外問わず、旅先で夜ひとりで出歩いていたと。もちろん、周りの人には「危険だ」と言われていたそうなのですが、相談者の方曰く、「危険な目に合いにくい体質」だそうで、自分から危険を感じたくて夜中に徘徊をしていたそうです。そして、本当に危ないところは匂いでわかるそうなのです。「それ以上近寄ってはいけないところ」には不穏な空気があるそう。まだまだこのお手紙の面白い箇所は続くのですが、ちょっとここまでにして、相談に答えていきたいと思います。
今回のお手紙から取り上げたいのが「野生の勘を取り戻したい」の話なのです。
なんですかこのお手紙は!いやぁ、本当に嬉しいです。こういうお仕事をしていて、すごく嬉しい瞬間が、ちょっとだけ変態の方が「こういうのあんたどう思う?」と投げかけてくれることで、素敵なお手紙をありがとうございます。
それで、この方のお手紙を読んで、僕は個人的に村上春樹さんの小説を思い出しました。僕は人生の一時期に村上春樹さんの小説にドハマリしていたことがあって、初期の作品からずっと読んでて、ハマり過ぎて休業宣言をしたのです(勝手に)。だから最近のは読んでなくて、老後の楽しみにしているんですけど、ある種の筆力の高い方の本を読んでいると、「自分がこれまで生きていて知らない世界」に引っ張られていきそうになるんですよね。
それで、村上春樹さんの小説って、これは個人的な意見ですよ?すぐそばに「向こう側の世界」が常に描かれているような気がするんです。僕が特に好きな『羊をめぐる冒険』もそうだし、『ダンス・ダンス・ダンス』もそうなのですが、「普段自分達が生きている世界」と「そっち側に行ってしまったら二度と戻れなくなってしまう」という世界がすぐそばにあるものとして、隣り合わせで描いてあるような気がしています。特に『ダンス・ダンス・ダンス』では「そっち側に行ってはいけない!」と止められるシーンとかもあるんですよ。
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