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「いらっしゃいませ」の直後に感じる、お客様の温度感について

もうけっこう昔の話になってしまうのですが、飲食店でバイトをしていた時に、美容室の経営者の方が接客のバイトをしに来ていたことがあったんですよ。もちろん、僕らもはじめは「嘘だ」と思っていました。「なんで美容室を経営している人がわざわざ違う、しかもチェーン店にバイトに来るのか」って。

でも、その人と話をしているとすごく面白くて、色々なお店で修行もして、自分のお店も持ったと。そして、自分のお店で社長になり、大きなお店も作った。何店舗か持ち、自分が統括する立場にもなったそうです。だからまぁ、正直お金には困っていないと。でも最近、「何かを見落としている」と駆け足だった自分の人生を振り返り、原点として「接客をもう一度やりたい」と思ったそうなのです。

「いらっしゃいませという係を、もう一度自分に取り戻したかった」

とその人は言っていたのです。

結果、その人は自分の経営する店舗を人に任せて、それで、自分はマンションの一室でお客さんを一人一人取ってやっていく形のスタイルに落ち着いたそうなのですが、それも「ドアから入ってきたお客さんから受け取る第一印象」を大切にしたかったからだと言っていました。

もうこの話自体が昔の話になってしまうし、今この人がどういう形態でお仕事をされているのかもわかりません。でも、ある種「経営者」まで努力によって昇りつめた人が「いらっしゃいませを取り戻したかった」というのはすごく印象深く自分の中に残っている話なのです。

お客様に「いらっしゃいませ」と言う人。

当然、「お店」という空間の中に入ってきてもらって、まだ外の「よそよそしさ」みたいなものが残る状態でそのお客さんと対面し、「いらっしゃいませ」と声を掛ける。お互いに「この人はどういう人だろう?」、「このお店はどういうお店なんだろう?」という猜疑心と警戒心と好奇心がミックスされた空気がある状態で、お互いの様子を見定めようとする。

色々な接客の業種の「いらっしゃいませ談義」は本当に面白くて、たとえばなんですけど、アパレルとかに勤める方とか、家電量販店に勤めている人とかって、「ただ見に来ただけのお客」と「何かを買いに来た本気モードのお客」の違いは一発でわかるそうです。

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