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「何がしたいのか」と聞かれても答えられない

今回、お手紙を送ってくださった方は50代の女性の方で、「自分が何をしたいのか。何をしたら人の役に立てる有能な人間になれるのかわからず、存在価値のないつまらない自分に焦りと虚無感を感じている」そうなのです。これ、現代人がこの社会や世界で生きる上での、「根本的に抱える不安や虚無感」をそのまま文章で表しているかのような感じがしました。

相談者の方は、以前は子どものケアをするやりがいのある職場に勤めていたそうなのですが、人間関係がうまく築けず、25年勤めて退職されたそうです。次に、自分で立ち上げた組織は3年目にして理事長解任の議決を受け退職し、リーダになることは向いていないのだと学んだそうです。

知人たちがNGOなどで多くの人々の幸せを応援するような活動を生き生きとしている中、この方は、「なんとなく過ごす日々」が続いているとのこと。それで、「あなたはいったい何がしたいの?」という友人の言葉に、思考停止をしてしまうそう。

「このまま夢ややりたいこともなく過ぎていく日々に焦りと情けなさを感じています。このままでいることがとてもしんどくて、どうしたらこの考え方から抜け出せるのでしょうか」と綴られていました。

さて、今回のお手紙から取り上げたいのが「『何がしたいのか』と聞かれても答えられない」の話なのです。

うわー、これはすごい、「わかります」と言ったら失礼になってしまうかも知れないのですが、まず、このお手紙で書かれているようなことは本当に、今の社会に生きている人たち全員に突きつけられているように感じられることですよね。

特別にならなくちゃいけない。役に立つ、有能な人にならなきゃいけない。キラキラ光っていなければいけない。なんかこう、大きな声では言えないけれど、そういう声や空気に対して、「うるせー」と言いたくなることは、僕もたまにあります。

それで、ちょっとこの相談文に関係すると思うので、昔話をひとつさせてください。

僕が占い師としてデビューしたのは30歳の時なのですが、そのデビューまでがやっぱりけっこう大変だったのです。あとやっぱり、デビューはしたものの、全然、料金設定とかどうすれば良いのかわからないし、お客さんが本当に来てくださるのかも心配でたまりませんでした。実際、この占いの道でご飯が食べられなくなったら、どのラインで撤退して、他の仕事に就くのか。それも、年齢が30歳だったからこそ、自分でその線引きはしなければいけないと考えていたのです。

そういう背景があったのですが、いよいよ、「占い師」としての仕事を始めて、最初のお客さんに会う前日に、僕は自分自身とひとつだけ約束したことがあります。

それは、「この仕事を通じて、何者かにならなくていいよ」

という約束でした。

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